「認知症」は老いに伴う病気の1つで、さまざまな原因で脳の細胞が死んだり、働きが悪くなることで、記憶・判断力の障害などが起こり、生活するうえで支障が出ている状態のことをいいます。
認知症のなかでも代表的な疾患は、「アルツハイマー型認知症」「脳血管性認知症」「レビー小体型認知症」「前頭側頭型認知症」です。
最も多い「アルツハイマー型認知症」は、記憶障害(もの忘れ)からはじまるケースが多く、脳梗塞や脳出血などを原因とする「脳血管性認知症」は、記憶障害や言語障害があらわれやすいという特徴があります。
認知症の中核症状・周辺症状
認知症の症状には、必ず見られる「中核症状」と、必ず見られるとは限らない「周辺症状」とがあります。
【中核症状】
中核症状は、脳の神経細胞が死んでいくことによって発生するもので、現実を正しく認識できなくなります。主な症状は以下のものです。
- 記憶障害:ついさっきのことを忘れる、新しいことを覚えられない
- 見当識障害:日付や場所、他者との関係がわからない
- 判断力の低下:順序だてて行う料理などができなくなるなど
- 失語:言葉がでない、理解できない
- 失認・失行:知っているはずのことや、できるはずの行動がわからなくなる
【周辺症状】
周辺症状は、うつ状態や妄想といった心理面・行動面の症状で、現在の環境や本人のもともとの性格、人間関係などさまざまな要因がからみ合って起こります。おもな周辺症状は以下になります
幻覚や妄想
「財布や通帳を盗まれた」などと言う“もの盗られ妄想”や、身近な人に危害を加えられたと訴える被害妄想などがあります。
物への執着や収集行動
好きなものや執着しているものをしまい込み、引き出しからカビの生えた食べものが発見されることもあります。
過食・異食
食事をしても「お腹がすいた」と訴えたり、ティッシュペーパーなど食べられないものを口にする異食が見られることがあります。
暴言や暴力、介護への抵抗
行動を注意されたり、制止されたりした時に暴言や暴力を起こす、あるいは介護への抵抗として入浴を拒否するなどの態度が見られます。
徘徊
よく知っている近所で迷ったり、自宅にいながら「家に帰る」と外に出てしまうことがあります。
認知症の親との接し方
認知症の親と適切に接するには、症状について理解を深めることが大切です。「なぜこんなことをするのだろう」「優しかったお母さんがどうして…」と思った時も、理由がわかれば感情的になるのを抑えることができます。
また、「認知症は本人の自覚がない」と思いがちですが、それは誤りで、本人こそ最初に症状に気づき、不安な気持ちに陥っています。
認知症の人は、理解力が落ちていても感情面は繊細ですから、自尊心を傷つけないことが大切です。子どものように叱ったり、頭ごなしに否定したりするのは禁物です。
【認知症の方に接する時の心得】
- 認知症の脳の働きをよく理解する
- 認知症があっても一定範囲の日常生活を持続させる(残った機能を生かして日常生活を持続する)
- できなくなったことを無理やりさせない
- 自尊心を傷つけない(認知症だからと軽視したり、頭ごなしに否定しない)
認知症の親を介護する家族は、徘徊などに振り回され、心理的に追い詰められることも少なくありません。介護経験者に相談したり、介護家族同士で交流したりして、理解者や協力者をもつと大きな心の支えになります。
介護者の気持ちは、認知症の人にも伝わります。介護者は、介護以外の時間ももつようにし、自分自身も大切にしましょう。