みなさんは「ろうけん」と聞いて何をイメージされますか?福祉関係者であれば、たぶん「介護老人保健施設」が大半でしょうか。今回のテーマは「老犬」です。昨今、ペット(家族)としての犬や猫が増えていく中、飼い主も犬猫も高齢化が進んでいます。そのような状況下で人と犬猫との間で老老介護は実際に起きている問題です。「癒しになるから」「一人では寂しいだろうから」と安易に高齢の方に動物を飼育することを勧めるのは良くないことです。犬猫も年を重ねれば認知症にもなります。もし高齢の飼い主が他界したら、その前に認知症となり飼えなくなったら…残された飼い犬猫はどうなるのか。生き物の命を預かっている以上、一度は真摯に向き合っておきたい問題です。老人ホームならぬ老犬・猫ホームを利用するにはどうしたらよいのでしょうか。
【老犬ホームとは】※老猫ホームもあります。
老犬ホームは、動物介護士や愛犬飼育管理士らペットの専門家たちが、飼い主に代わって高齢の犬たちの世話をする施設です。人間同様、動物医療が進んだおかげで、平均寿命が延びました。長寿化は飼い主にとっては喜ばしいことですが、癌、難病、認知症などこれまでになかった問題を生んでいます。
【老犬ホームの環境】
24時間、空調管理された2~3平方メートルずつの空間に柵で仕切られており、相性の良い犬や症状や年齢が近い犬同士が数頭ずつ、同じ柵内で生活しています。自由に日光浴もできます。
【老犬ホーム内のケア】
要介護の犬は、1日2度、時間をかけて食事介助、投薬、体位変換やおむつ交換が毎日繰り返されています。
【老犬ホームの料金】
年間の預かり費用は、施設によって様々ですが、平均約36万円程度で、医療費、ペットシーツやおむつ、療養食などは実費として別途徴収されます。
【老犬ホームの探し方】
『老犬ホーム・老猫ホーム・介護ネット』というサイトがあるようです。見つかったら連絡し、連れていく日時や移送方法などを相談。もし連れていけない場合は有料でホーム側が訪問してくれるところもあるようです。預けるには、ワクチン接種記録がある、噛み癖や伝染病を持っていない等施設ごとに条件が規定されています。施設探しは、これは老人ホームにも言えることですが、なるべく見学し、ケアのレベル、雰囲気やスタッフとの相性を確認した上で決めた方が良さそうです。
認知症を患う老犬の場合、身体は健康で自由に動き回ることができれば徘徊や粗相、夜鳴きを繰り返すこともありますので、こうなると若年の飼い主でも一緒に住み続けるのは厳しくなるでしょう。
先日TVで認知症の高齢女性が、月1回家族と一緒に必ず愛犬を預けた老犬ホームを訪問し触れ合う番組を視聴しましたが、愛犬も認知症かつ視力も著しく低下していて普段は1日じっとしているのが常なのが、元飼い主だった女性に会うと尾を振り喜ぶ姿がそこにありました。たとえ離れ離れになったとしても接し方を見直すことで、ともに最期まで心を通わすことができるものだと改めて感じました。この対応は今後、認知症の方へ五感を刺激する対応に役立つものだと深く感動いたしました。