施設で生活相談員をしていた時のこと。
私はまだ勉強したてのまさにど素人でした。
その時、難しくもうれしかったことがあったので、ひとつご紹介したいと思います。
1人のまだお元気そうな男性がある日入所されてきました。
江戸っ子のような社長さんで、まだまだ現役そのもの。
高齢であることと、退院されたばかりという理由で
ご家族が半ば入所を決めてしまったそうです。
入所といっても、ご本人は全く不本意であり、
初日から「帰る」と施設の玄関から入る様子がみられないほどでした。
お声がけしても食事もほとんどとらず、
会社の若い職員に好きなものを買ってきてもらい
それを食べ、時には自身でタクシーを呼び、勝手に外出されることもありました。
なんとか生活になじんでいただこうと
利用者さんにとって拘束と感じるようなことはせず、なるべく自由に対応しておりました。
ご家族の方に状況を説明・相談し、安全な範囲でですが・・・
また、お友達といっては変な表現ですが、堅苦しいことが苦手な性分と聞き、
気軽に話しかけ、会話もあわせてコミュニケーションをとるよう職員で統一したところ、少しずつ施設の輪に入っていただけるようになりました。
愛煙家の方で、入所当初は本数の制限があることに怒り出すほどでしたが、
職員を信用してくださったのか、ご自身で本数を意識してくださっていました。
施設でのご生活は、対応や、活動などどうしても偏りがちになる所はありますが、
視点を変えて利用者さんに接するとこんなにも変化があるのかと
嬉しかったことを覚えています。
入所された時は強面で、少し「怖い・・・」と思ってしまったことがありますが、
入所も半年が過ぎたころには「ご機嫌な方」にかわられていました。
コミュニケーションは本当に大切だな・・・と感じ、
以後、利用者さん・ご家族と接する時は、事前に準備はしますが
先入観をもたないよう心掛けるのでした。