年金の制度はとても複雑で、年金制度全体を理解している人は本当にいるのだろうか?と思うほどです。そのせいか年金記録の消滅や年金支給の処理誤りなど、年金に関する不祥事は後を絶たず、「年金不信」を感じている方も多いのではないでしょうか。
そのような中、また「年金支給漏れ598億円で10万人ほど…」という内容のニュースが流れました。この漏れた年金は振替加算というもので、その対象は公務員がほとんどでした。
■加給年金
振替加算の前に加給年金の話をしなければなりません。
例えば夫が厚生年金や共済年金に20年以上加入し年金をもらう場合、65歳未満の生計維持している妻がいると夫の年金に配偶者加給年金が加算されます。「配偶者手当」、「扶養手当」みたいなものですね。夫と妻が逆の場合も同様です。
■振替加算
昭和61年以前は、サラリーマンの配偶者は国民年金への加入が任意となっていました。昭和41年以降生まれの人は昭和61年以降に20歳になるので、国民年金にフルに加入することができますが、それ以前の人は加入が任意だったため、フルに加入していない人が多くいます。
そうすると受給できる年金が低額となり、その不足分を補うべく配偶者についていた加給年金が、自分が65歳となり年金をもらうようになったときに自分の年金に振り替えられます。
振替加算とは以上のようなものですが、何故支給漏れの対象がほとんど公務員だったのでしょうか。
会社勤めのサラリーマンは日本年金機構の管理する厚生年金に加入していますが、公務員の年金は共済組合が管理しており共済年金を受給していました。
平成27年に被用者年金一元化というものがあり、共済年金を厚生年金に合わせる大改正が行われ、日本年金機構が管理するようになったわけです。その際に共済組合からの情報が上手く伝わらなかったのが原因のようですが、単純と言えば単純な原因ですね。
原因は単純でも支給が漏れた年金は598億円ですので、簡単に済ませられる問題ではありません。
本来もらえるべき年金がもらえなった人には遡って支給されますが、すでに亡くなっている人もいるようで、この場合は残された遺族に支給されるようです。心当たりのある人(特に公務員だった場合)は、日本年金機構に確認した方が良いと思います。
作業の間違えが新たな作業を生んで何だか大変そうですが、確実に対応してもらいたいものです。これで年金の不祥事は終わり…、とはならないと思いますが、年金不信を払拭できるよう誠実な作業に心がけてほしいものです。