皆様、こんにちは。暑苦しい真夏ですね。「暑いですね~」が挨拶の始めにくるように、季節に沿って心の琴線もそれぞれ。
最近、認知症の方と百人一首で盛り上がっています。
Aさんは、短期記憶はままならなくても、「大江山~」と切り出すと「いく野の道の遠ければ~まだふみもみず 天の橋立~」と返されます。ご本人いわく、勝手に口から出てくる、とのこと。(因みに、最後の天橋立~を言っても大江山は出てこないことが多いです。)
リズムごと全身にしみこんでいるようですね。私が認知症になったら何を歌うのか・・・ドラえもんとかサザエさんなど可愛い方ですが、何か刑事もののバックミュージックを唸っていたら怖いですね!
Bさんは、嫌いな2句があるそうで、その一つ「しのぶれど色に出にけりわが恋はものや思ふと人の問ふまで」(平兼盛)に対して「男のくせに!なんと女々しい!仕事しろ!」とのこと。名句も東京大空襲を乗り越えたご婦人には滅多切り。さすが凛々しいです。もう一つはどうしても思い出せなくて、いろいろ詠みあげて探しているところです。
ところで、百人一首では夏の句が少なくて、4つしかないそうです。
「夏の夜は~」…、はい、ここでスラッと一句出る方はすごいですね!(北海道は下の句だけでカルタ大会をすることも多く、私は大人になるまで上の句の存在を知りませんでした)
・全文「夏の夜は まだ宵ながらあけぬるを 雲のいずこに月やどるらむ」
現代訳は、『夏の夜はまだ宵だと思ううちに明けてしまったけれど、雲の何処かに月は宿っているのだろうか』とのこと。明けの早さで月が見えん!お月様は雲の中にいるのかな?といった、写実的なようなメルヘンなような歌ですね。この感性、平安男子は愉快です。作者は清原深養父さん(平安時代中期の貴族で歌人。中古三十六歌仙のおひとり)。有名どころの紀貫之などと交流もあり、お琴の名手でもあったそうです。やはり音感も良かったのでしょうね。
ちなみに先ほどのAさんは、妄想なども強まっていて、次の週は「大江山の鬼は優しいらしいから、かくまってやった」と話されていました。鬼を元気づけるのに、ご自身の好きな石原裕次郎のCDを流しているそうです。