厚生労働省は9月17日、第32回社会保障審議会介護保険部会を開催した。今回は介護保険事業計画や介護基盤整備など「保険者の役割・機能強化」や「必要なサービスを確保するための方策」を焦点に議論された。
「保険者の役割・機能強化」の議題では、参酌標準廃止と総量規制が取り上げられた。現在、保険者は各地域で必要な介護サービス量を見込んだ介護保険事業計画を策定しており、計画を策定する際に参酌すべき標準として、2014年度に要介護2から5の認定者数に占める施設・居住系サービスの利用者数を37%以下にするという国の基本方針に基づいた「参酌標準」がある。
この参酌標準が、計画に定めた施設定員数が超過した場合など都道府県知事や市町村長が事業者指定を拒否できる「総量規制」を後押ししているとして、今年6月18日の閣議決定では「参酌標準の撤廃」が定められた。2012年度から2014年度の第5期介護保険事業計画からは、各都道府県が地域の実情に応じて策定できるとされ、今後、総量規制の緩和が検討されることになっている。
全国市長会介護保険対策特別委員会委員長の石川良一委員は、「総量規制が緩和されると、実質上、過剰整備を容認せざるを得ず、施設整備を中心に特定の地域に介護サービスが偏在する」として、総量規制の緩和に明確な反対意見を唱えた。
淑徳大学准教授の結城康博委員は、「地域支援事業の財源構成として上限枠や使途割合などを保険者の裁量に委ね、第2号被保険者の保険料割合分を引き上げて40歳以上の被保険者が利用できる事業を拡充すべき」と保険者裁量権の拡充を求めた。また介護予防事業を任意事業とし、保険者の判断で介護給付以外の多様なサービスも地域に応じて構築していくべきとした。
「必要なサービスを確保するための方策」については、第5期介護保険事業計画策定体制の例が示された。
●日常生活圏域ごとのサービス整備を促進していくための手段として、市町村介護保険事業計画の策定のため日常生活圏域ごとに「日常生活圏域部会(仮称)」を設置し、日常生活圏域ニーズ調査や給付分析などを行い、把握した地域の諸課題を踏まえてサービスの整備方針を検討していく。
●この「日常生活圏域部会(仮称)」に既存の地域包括支援センター運営協議会・地域密着型サービス運営委員会などの地域団体や地域住民が参加することにより、ニーズに即したサービスの整備を図る。
保険者による日常生活圏域ごとのサービス拠点の整備イメージでは、保険者の裁量を強化し、ニーズ調査に基づいた市町村介護保険事業計画の策定を通じて日常生活圏域ごとのニーズを明らかにし、事業者の参入促進を図ることで一体的なサービス提供を目指す。事業者の選定については公募および適正な選考を行った上で指定。一定期間経過後、再度、公募・選考を行い、競争を通じたサービスの質の確保を図る。
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立教大学教授の橋本正明委員は、地域包括ケアの基盤になるサービスとして小規模多機能型居宅介護を取り上げ、小規模多機能型居宅介護のケアマネジメントについて、「小規模多機能型介護を利用することでケアマネジャーを替えることがネックとなっている」と問題点を指摘した。対策として居宅や施設など他の介護保険サービスから小規模多機能型介護へ移行した後も、引き継ぎ支援への加算などなんらかの連携報酬を設け、ニーズに応じて地域密着型と居宅介護を柔軟に移動できるようにすることなどを提案した。