万有製薬株式会社は8月27日、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)感染症の治療薬、「ダプトマイシン」の製造販売承認申請を行ったと発表した。
MRSAは、メチシリンを始めとして、ペニシリン、アモキシシリン、セファロスポリンなどの多くの抗生物質に対して薬剤耐性を獲得した黄色ブドウ球菌。主に接触感染で呼吸器感染症や敗血症、感染性心内膜炎、皮膚軟部組織感染症などを引き起こし、国内でのMRSA感染患者は、年間約20万人にのぼるといわれている。
病院内で分離される黄色ブドウ球菌に占めるMRSAの分離頻度はすでに全体の約半数を超え、院内感染の起炎菌の一つとしても大きな問題となっている。抵抗力や免疫力の低下した高齢者が暮らす施設でもMRSA感染は日常的に起きており、命をも奪う強い毒性があるため、日常的な感染予防が不可避となっている。
「ダプトマイシン」はリポペプチド系抗生物質で、MRSAに有効性を示す新しい作用機序の抗生物質。グラム陽性細菌の細胞質膜に作用し、細胞機能不全を引き起こして、細菌を死に至らしめるというもの。
海外では米国、欧州をはじめ、現在世界68カ国で承認されており、同社では、すでに国内でMRSA感染症患者に対する有効性と安全性を評価したフェーズIII試験が終了した。日本のMRSA治療における新たな治療選択肢となるものと期待されている。