介護食の基礎知識

これだけは押さえたい、介護食の基礎知識 vol.1

「介護食」。最近、この言葉をよく目にしたり耳にしたりする機会が増えたと感じる人も多いではないでしょうか。特にドラッグストアなどでは、レトルトパックに入った様々なタイプの介護食を見かけるようになりました。ただし、あまりに商品が多過ぎて、実際に買うとなると、どれを選べばよいのか、迷ってしまうこともあるのでは?そこで、介護食を有効に使いこなすために、どうしても押さえておきたい基礎知識を管理栄養士の平井千里さんに解説していただきました。

介護食とは、摂食や嚥下(えんげ)に障がいがある人を主な対象とした商品。つまり、食べたり、飲み込んだりするのが難しくなった人でも、食事を楽しんでもらえるように工夫をした食品のことです。

もっとも、「食べたり飲み込んだりするのが難しくなった」といっても、人によってさまざまな状態があります。「歯の状態が悪くて、ちょっと堅いお菓子をかみ砕けなくなった」という程度の人もいれば、「ご飯は食べられないけどおかゆなら十分食べられる」という人もいます。中には、「とろりとした液体状のものでなければ、何ものどを通らない」という人もいるでしょう。

このように主な利用者の状態は様々ありますから、介護食も、それにあわせて様々なタイプが用意されています。それだけに、その人の状態にあった商品はどれなのかを示す基準がないと不便ですよね。

実は、その基準となり得る指標が、既に各省庁や学会などから発表されています。今回は、そうした指標の中でも、主な5つの内容と特長を説明します。

そしゃく・嚥下困難者用の許可基準

1994年、当時の厚生省が作成した分類です。分類は3段階で、I-III(ローマ数字の1~3)で表されます。厚生省が作成したものでしたが、あまり広く普及しなかった印象があります。

ユニバーサルデザインフード(日本介護食品協議会)

独自の基準を制定し、その基準に見合うものに「ユニバーサルデザインフード(UDF)」として特別なマークをつけています。「容易にかめる」「歯ぐきでつぶせる」「舌でつぶせる」「かまなくてよい」の4段階があります。

ちなみに以前は数字でも表記されており、「容易にかめる」が区分1、「歯ぐきでつぶせる」が区分2、「舌でつぶせる」が区分3、「かまなくてよい」が区分4でしたが、2016年9月に数字区分の表記がなくなりました。おそらく、これから紹介する他の基準が、えん下状態の悪いほうから順に数字を付けているのに、ユニバーサルデザインフードだけは、えん下状態の良いほうから順に数字が付けられていたためだと思います。

一般の店頭の介護食売り場では、ユニバーサルデザインフードで表示されていることが多いように思います。最初に介護食を選ぶ人は、この指標を参考にすれば混乱が少ないでしょう。

詳細は「日本介護食品協議会」のHPで確認して下さい。なお、いまだにgoogle検索で「ユニバーサルデザインフード」と検索すると「日本介護食品協議会」の古い表記のURLがトップに表示されますので、注意して下さい!(2017年12月15日現在)

嚥下食ピラミッド

1980年代から聖隷三方原病院で使われていた介護食の分類方法で、2004年、金谷節子先生によって学会発表されました。介護食をL0~L4、介護食・移行食(介護食・移行食で1種類です)、普通食の6段階に分類しています。病院で実際に使われてきた分類であり、実践しやすく分かりやすく説明されていたことから、瞬く間に広く病院や介護施設で用いられるようになりました。ご家族が施設や病院に入ることになったという方は、知っておいた方が便利な指標といえます。

詳しくは「嚥下食ドットコム」をご覧下さい。

日本摂食嚥下リハビリテーション学会調整食分類2013」

本家である日本摂食嚥下リハビリテーション学会からの正式な分類が発表されたのが13年。この分類はリハビリをすることを目的に考えられていたため、「えん下ができるかどうか?」や「えん下ができるとすれば、どのようなものならOKか?」など、えん下リハビリの初期の段階のステップが他の分類よりも細かいことが特徴です。

具体的には7つに分類されており、えん下機能が低下しているほうから、コード0j、1j、0t、2-1、2-2、3、4となっています。昨今では、この分類を「学会分類」と呼んで利用している施設や病院が多いように感じます。専門家でない人にとっては、少し難しい表現も含まれていますが、特にご家族がえん下のためのリハビリを受けることになった場合などには、知っておいた方がよいかもしれません。

詳しくは「一般社団法人摂食嚥下リハビリテーション学会」を見てください。

スマイルケア食

農林水産省による「スマイルケア食」が14年11月に発表されました。農水省はえん下困難だけでなく、そしゃく・えん下に問題ない人も対象にしたかったようです。

分類はゼリー状(赤丸)0、ムース状(赤丸)1、ペースト状(赤丸)2、かまなくてよい(黄四角)2、舌でつぶせる(黄四角)3、歯茎でつぶせる(黄四角)4、容易にかめる(黄四角)5、の7つに分類されています。

注意が必要なのは「ペースト状(赤丸)2」「かまなくてよい(黄四角)2」と数字の2を使った段階が2つあること。スマイルケア食のマークがついている商品も一般の店舗で見かけるようになってきていますので、特に注意しましょう。また、以前は赤A、赤B、赤C、黄A、黄B、黄C、青Dと表記されていました。

ユニバーサルデザインフードとともに、一般の店頭の介護食売り場で活用されることが多い指標です。

詳細は「農林水産省 スマイルケア食(新しい介護食品)」を見てください。

今回は、5つの指標について特徴をお話しました。次回は、この5つの指標について、もう少し、詳しく見ていきます。

平井 千里(ひらい・ちさと)
女子栄養大学大学院(博士課程)修了。名古屋女子大学 助手、一宮女子短期大学 専任講師を経て大学院へ進学。「メタボリックシンドロームと遺伝子多型」について研究。博士課程終了後、介護療養型病院を経て、現職では病院栄養士業務全般と糖尿病患者の栄養相談を行うかたわら、メタボリックシンドロームの対処方法を発信。総合情報サイトAll Aboutで「管理栄養士 /実践栄養」ガイドも務める。
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