ケアマネジャーの仕事は、ご家族とも深く関わります。
90歳を過ぎたTさんは、一人暮らし。足が弱り、家事が思うようにできなくなったことから相談を受けました。Tさんを主に介護するのは、甥の娘様であるAさんでした。血のつながりは少し遠いのですが、Aさんは早くにお母様を亡くされており、Tさんを母親代わりのようにして育ったとのこと。親身になって、面倒を見ていらっしゃいました。
Tさんは、独身で70歳過ぎまで仕事をされた方、非常に気丈で、最初は介護サービスの利用を拒否、Aさんと一緒に説得し、時間をかけながら、なんとかヘルパーさんの来訪を受け入れてもらえるようになりました。その後は、徐々に認知症も進み、ショートステイの利用など介護サービスを増やしていきましたが、できるだけTさんの希望に添うような介護がしたいと、Aさんは話し合いにも積極的に参加して下さいました。
いよいよ在宅生活が難しくなり、Tさんは以前から希望されていた近所の施設に入所されました。施設に入所されると、在宅の支援は終了となり、施設のケアマネジャーにバトンタッチされます。
最後に挨拶に来て下さったAさん「結婚を機に仕事を辞めるのですが、これからは介護の仕事をしたいなと思っているんです。私にもできるでしょうか?」 聞けば、Tさんの介護を通してヘルパーさんなどと接する中で、介護の仕事に魅力を感じたとのこと。もちろん、できますとも!あなたのように優しくて素敵な方に介護の仕事に携わっていただけたら、どんなに嬉しいことでしょう…
Aさんは、当時まだ20代でした。若い方に介護職を目指してもらえることはとても嬉しいことです。デイサービスで働いていた頃、大学生や専門学生が研修で訪れると、皆さんの元気度がアップしました。目の輝きが増すのです。若い方から、多くのエネルギーを受け取るのだと思います。
ヘルパー研修を受けた時に、講師の方から、こんな言葉をいただきました。「その方の人生の集大成の時期に関わらせていただく、介護の仕事はそんな尊い仕事なのですよ」確かに、介護の仕事は大変なことも多く、そちらの面がクローズアップされてしまいがちですが、その方の人生にも接することのできる魅力的な仕事でもあります。その方だけではなく、時にはご家族との素敵な出会いもあります。
4月を迎え、今年も多くの若者が介護現場に羽ばたくことと思います。介護の仕事を好きになってほしい、長く続けてほしい…そのためには、処遇の改善、働きやすい環境作りなどの課題も伴いますが、新年度のスタートにあたり、切に願う今日この頃です。