みなさんは「技術・家庭」と聞いて、どのようなことを思い浮かべますか?
私が中学生の頃、男子は「技術」、女子は「家庭科」と、完全に男女別の授業を経験しました。家庭科では調理実習の他に、ベビードレス等の被服製作をした記憶があります。
この「技術・家庭」の科目は、20年程前から、男女同一のカリキュラムに変わっているそうです。そのような背景からなのか、今の20~30代にかけての若い世代の男性は、料理に抵抗がない人が多いと、よく聞きます。確かに、最近は男性向けの料理番組や、コマーシャルでも男性タレントが料理をする場面も多くなり、男性の料理はめずらしいものではなくなりましたね。「男性が料理に抵抗がない」というのも頷ける気がします。プロの料理人の世界は、男性社会かもしれませんが、家庭で男性が料理をすることは、「男子厨房に入らず」という言葉があったくらいですから、現代のこの様子は、昔では考えられないことだったでしょう。
では、料理に抵抗がないのは若い男性ばかりか、というと、そうでもありません。
私が以前、訪問介護の仕事をしていた頃、90歳の男性利用者様がいらっしゃいました。奥様が他界されてお一人暮らしになり、介護保険サービスの利用を開始されました。訪問介護サービスは掃除が中心でしたが、食事はどうされているのかを伺うと、何と自分で料理なさるとのこと。
「以前から料理をされていたのですか?」
「とんでもない!料理なんてやったことなかったよ。」
お一人になって、初めてやってみたのだそう。献立を考え、ご近所の商店街へ足を運ばれ、食材を選んで調理する。まったく苦ではないご様子でした。
高齢になると、今まで普通にやっていたことでも億劫になってしまうことがあります。新しいことを始めるのは、なかなか大変なことで、これまで経験のないことであれば尚更です。この男性も初めのうちは誰もやる人がいないからと、やむを得ずという気持ちで料理を始めたのかもしれませんが、やってみると意外とご本人様には合っていて、自然と楽しみの一つになっていったのかもしれません。
いくつになっても、新しいことにチャレンジする気持ちは大切なことだと思います。また、自分なりの楽しみを持つことは「生活の質」を高めることにもなるでしょう。ご自分の身体と相談しながら、無理のない程度に取り組む。年齢を重ねても、そんな「ほどほど熱中できるもの」を続けていけると良いのかもしれませんね。