昨年4月の介護報酬改定で導入された福祉用具貸与価格の上限について、厚生労働省は10日の社会保障審議会介護給付費分科会で、今年度の上限価格の見直しは行わないことを提案し、大筋で了承された。同省が、価格の変更による経営への影響を調べたところ、「収益が減少した(減少する見込み)」と回答した福祉用具貸与事業所が7割超に上り、こうした点にも配慮した格好だ。
今年度の上限価格の見直しについて審議した分科会
昨年春の改定に伴い、月100件以上の貸与件数のある福祉用具については、貸与価格の全国平均が公表され、「全国平均貸与価格+1SD」が各商品の貸与価格の上限となった。事業所ごとの貸与価格のばらつきを無くすことが主な目的で、昨年10月には、2807点で上限価格が設定され、今年度以降も、概ね年に1度のペースで見直しを行うことになっていた。
だが、厚労省が同年秋に行った調査では、有効回答を得た2978事業所のうち、前年度から「収益が減少した(減少する見込み)」と回答した福祉用具貸与事業所は74.2%に上った。
また、貸与価格の変更で発生した事務・経費負担を複数回答で尋ねると、トップは「利用者との契約変更手続き」(70.8%)で、次いで「商品カタログの価格修正・再印刷の発生」(69.7%)、「事業所内システムの改修作業の発生」(68.1%)などと続いた。同省は「今回の変更の影響を精査する必要がある」としており、こうした状況も踏まえ、今年度は上限価格を見直さない方針を決めた。
ただ、新商品の貸与価格の上限に関しては、予定通りに公表するほか、今年秋の消費増税時に実施する上限価格への2%分の補てんについても行うとしている。
■来年度の価格変更は「未定」
一方、厚労省は来年度の上限価格の見直しについて、年度内に行う実態調査の結果を踏まえて決めるとしており、現時点では「未定」だ。10日の分科会では、複数の委員から「どのような状況では実施するのかというルールをつくる必要がある」と指摘する声が上がり、同省側はこれについても検討するとしている。